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ご挨拶

 平成25年(2013年)4月1日付で 生命機能研究科・個体機能学講座/医学系研究科・感染免疫医学講座・免疫細胞生物学教室 の教授として着任しました石井 優です。どうぞよろしくお願い致します。

 当教室の源流は、大阪大学医学部附属癌研究施設・腫瘍代謝部門(初代:松本圭史教授,2代:北村幸彦教授)に遡ります。その後、附属バイオメディカル教育研究センター・腫瘍病理部門,医学系研究科/生命機能研究科・免疫発生学教室(3代・先代:平野俊夫教授)を経て、現在に至っております。この間、病理学・腫瘍学(内分泌学→血液学)→免疫学と、その時代の研究トレンド、講座主宰者の研究動機に応じて、当教室の主題は変遷をしてきましたが、一貫して「ヒトの病気」をテーマとして医学・生物学研究の中心的課題を扱ってきたと言えます。このような歴史と伝統のある教室を引き継ぐ機会を得て、改めて身の引き締まる思いを感じております。

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 私自身は、平成10年3月に大阪大学医学部医学科を卒業した後に、旧第3内科(岸本忠三教授)に入局し、関節リウマチなどの自己免疫疾患を中心とした臨床・研究を行いました。その後、学部生時代にお世話になっていた薬理学教室(倉智嘉久教授)にて、細胞シグナル伝達の生理的調節機構に関する基礎的研究を行いましたが、ここで生きた細胞を生理的に測定するイメージング技術の基礎を習得しました。平成17年に医学博士号を頂いた後は内科に戻り、自分自身の新たな研究領域を立ち上げるべく、免疫学研究とイメージング技術の融合研究を目指しました。この当時、私が赴任しました国立病院機構大阪南医療センター(佐伯行彦部長)は、研究施設(臨床研究部)が充実しており、私はリウマチ内科医としての臨床業務の傍ら、空いた時間に研究を自由に行うことができました。博士号を得た直後の若い時期(当時31歳)に、自分自身のアイデアで自由な裁量で研究を行う機会を得たことは大きかったと思います。

 関節リウマチでは、炎症関節で骨が破壊・変形する難治性の自己免疫疾患ですが、ここで骨を壊している「犯人」が破骨細胞という、特殊に分化したマクロファージです。炎症関節では多数の破骨細胞が集まってきますが、私は破骨細胞がどうやって集まってくるのかということに興味を持ち、細胞を動かす様々な物質をスクリーニングしました。その結果、ある分子(スフィンゴシン1リン酸)が破骨細胞を強力に動かす能力があることが分かりました。しかしながら、この分子が本当に生体内で破骨細胞を引き寄せているのか、という直接的な証拠を得ることはできませんでした。

 そこで注目したのが、当時免疫研究で応用され始めたばかりであった、生体イメージング技術でした。私は、2光子励起顕微鏡を駆使して、リンパ節での抗原提示の動態を生きた実験動物内での可視化に成功していた米国国立衛生研究所(NIH)のRonald Germain博士の研究室に行き、そこでこの研究手法を習得すると同時に、私は破骨細胞の動きを可視化するために、生きた「骨髄内」の生体イメージングに取り組みました。硬い石灰質からなる骨組織に囲まれた骨髄腔の生体イメージングにはかなりの困難が伴いましたが、諸条件を克服して、骨を全く傷つけることなく、その内部を生きたままで観察する方法論を開発しました。そしてこれを用いることで、実際の骨組織内でのスフィンゴシン1リン酸による破骨細胞の動態制御機構を明らかにすることができました。独自で開発した方法論を用いて、自分自身の新しいコンセプトを証明できたときは感慨もひとしおでありました。

 平成21年からは、大阪大学に新たに立ち上がった研究拠点である免疫学フロンティア研究センターに特任准教授(平成23年より同教授)として赴任し、生体イメージングを利用した免疫学研究を目指して、自身の独立した研究室を持つ機会を得ました。ここでは、免疫学分野のみならず多くの研究者と交流することができ、骨髄のみならず様々な組織・臓器のイメージングに挑戦し、また研究テーマとしても骨破壊だけではなく、獲得免疫系・慢性炎症・がんの浸潤・転移など、研究を発展させていくことができました。この4年間、本当に多くの先生方と貴重な研究交流を得ることができたからこそ、今の研究成果があると考えます。つくづく、研究は一人ではできないと痛感させられています。

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 この度、医学系研究科/生命機能研究科・教授として奉職する機会を頂きました。今後は、このまだまだ可能性の広がるイメージング研究をさらに発展させていき、自らのライフワークとして、ダイナミックな「免疫細胞社会の本質」を明らかにしていく決意でありますが、これに加えて、①より一層医学・医療を意識した免疫学研究 や ②免疫学を通して医学・生物学を見る眼を養う後身の教育 にも注力していきたいと考えています(詳細は研究内容をご参照ください)。

免疫・炎症は、自己免疫疾患・アレルギーや感染症だけでなく、心血管病変・生活習慣病・がん・外傷性疾患など、ほとんどすべての病気の基本病態であります。広い視野をもって免疫学を扱い、免疫学を通して病気を理解して新しい疾患治療法の開発を目指したいと考えます。また、免疫学を通して、様々な生命医学領域との研究交流を行い、「免疫を通して人をつなぐ、多臓器・多分野連関」を行っていきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願い致します。

 

経歴

平成10年                大阪大学医学部医学科 卒業

平成10~11年         大阪大学医学部附属病院 研修医 (第3内科)

平成11~12年         国立大阪南病院 研修医 (内科)

平成12~17年         大阪大学大学院医学系研究科 助手 (薬理学)

平成17~21年         国立病院機構大阪南医療センター 医員 (リウマチ内科)

平成18~20年         米国国立衛生学研究所・国立アレルギー感染症研究所 客員研究員

                                (Human Frontier Science Program 長期派遣研究員)

平成21~23年         大阪大学免疫学フロンティア研究センター 特任准教授 (生体イメージング)

平成23~25年         大阪大学免疫学フロンティア研究センター 特任教授 (細胞動態学)

平成25年~             大阪大学大学院生命機能研究科/医学系研究科 教授 (免疫細胞生物学)

主な受賞歴

日本アレルギー学会・学術大会賞(平成18年),日本リウマチ学会・学会奨励賞(平成19年),科学技術分野の文部科学大臣表彰・若手科学者賞(平成22年),アステラス病態代謝研究会・最優秀理事長賞(平成22年),長寿科学振興財団・若手研究者表彰・会長賞(一等賞)(平成23年),日本骨代謝学会学術賞(平成25年),日本医師会医学研究奨励賞(平成25年),日本学術振興会賞(平成26年)

学会活動

日本免疫学会(評議員),日本リウマチ学会(評議員),日本薬理学会(評議員),日本骨代謝学会(評議員)

日本炎症・再生医学会(評議員,常務理事(学術担当)),日本骨免疫学会(理事)

日本分子生物学会,日本癌学会,日本内科学会,日本臨床免疫学会,日本アレルギー学会,など

その他の記事

日本骨代謝学会HP「Infinite Dream」:骨の生体イメージング ~どこから来て、どこへ行くのか~

日経バイオテク,2015年8月31日号「バイオイメージング最前線」(第4回):”動く、動かぬ証拠をつきつける”

大阪大学医学系研究科メールマガジン2014年1月号「リレーエッセイ」:日本のおもてなしと過剰サービス